クラゲの飼育

第1回 クラゲの飼育

足立 文新江ノ島水族館 展示・飼育グループ
学芸員 飼育技師

クラゲのことをもっとよく知るためには、飼育して観察してみることもとても有効な方法です。また、クラゲが漂う水槽を眺めているだけでも、リラックスした気分になれると思います。ここではクラゲの飼育についてお話ししましょう。

1. クラゲの入手方法は?

① 購入

クラゲも、熱帯魚と同様に観賞魚店などで購入できます。インターネットで検索しても、いくつか出てきます。観賞魚店で比較的よくみられる種類は、タコクラゲ、カラージェリー、サカサクラゲなどです。国内外で採集されたものなので、時期、天候、輸送手段によっては、在庫がない場合もあります。

② 採集

クラゲは、日本国内の記録だけでも、大小600種類近くが確認されています。採集を試みれば、何かしらクラゲは採れると思いますが、種類によって出現時期が異なるので、目的とするクラゲがあれば、予め出現情報を集めておく必要があります。漁港などで採取できる種類、アマ藻場・ガラ藻場に出現する種類、潜水が必要な種類等様々ですが、安全に採集できる場所を見つけておく必要があります。

2. クラゲの餌は?

小さな動物プランクトンを餌としているもの(① )が多いですが中には、魚肉やアミをよく食べるもの(② )や、他種のクラゲを食べるもの(③ )もいます。

①小さな動物プランクトンを餌としているもの

野外でプランクトンネットを曳き、天然の小型プランクトンを採集してくればよいのですが、これはなかなか大変なので、多くの場合、ブラインシュリンプ(アルテミア・ノープリウス幼生)を与えます。こちらは、観賞魚店などで卵を購入し、これをふ化させて使います。

② 魚肉やアミをよく食べるもの

触手や口に触れさせてみて、取り込むようであれば、アルテミアの卵を購入するよりも楽かもしれません。ただし、場合によっては、一度取り込んだかに見えても、消化せずに後から吐き出すこともあるので要注意です。

③ 他種のクラゲを食べるもの

他のクラゲしか食べない種類も中にはいますが、クラゲ'も'食べるという種類については、クラゲがたくさん採れたり育ったりした場合には、餌として活用することもできます。

3. クラゲを飼育する設備は?

必要なものは、飼育容器、海水、餌、エアーポンプ、ろ過器といったところです。飼育するクラゲの種類によっては、水温調節機器(サーモスタットとヒーター、冷水機)も必要となります。魚類の飼育との大きな違いは、水流を作ることと、ろ過槽を付けた場合に、そちらに吸い込まれないような工夫の2点が必要だということです。クラゲ類は遊泳力が小さいため、水流がないと漂うことができず、また、なにかしら仕切りがないと、ろ過槽へ流れてゆく水流に乗って、吸い込まれて行ってしまいます。仕切り板としては、数mmの小孔の多数開いた樹脂板(多孔板)を使います。
成長段階や種類によって、飼育に適した設備を選ぶことも必要です。

① 小型容器による止水飼育

ポリプの飼育や、遊離したての小さな個体を低密度で飼育する場合にとる方法です。但し、給餌を行った際にはその後の水質に留意し、必要な場合は換水を行います。また、水量が少ないので、水温の変化にも注意が必要です。

② スポンジフィルターを用いた水槽での飼育

ポリプの飼育や、海藻などに付着するタイプのクラゲを飼育する場合にとる方法です。また、多孔板による仕切りを設置すれば浮遊性の種類も飼育可能です。

③ ビーカーや小型水槽を用いた通気撹拌飼育

多孔板の穴径よりも小さなサイズのクラゲ等を飼育する場合にとる方法です。但し、給餌を行った際にはその後の水質に留意し、必要な場合は換水を行います。

④ 外部式ろ過循環水槽による飼育

多孔板の穴径よりも大きなクラゲを飼育する場合にとる方法です。循環の途中に水温調節機器を設置し、また、水槽への水の噴き出しの強さと方向を調節することで、その種類にあった水流を工夫することができます。