エチゼンクラゲの漁業への被害が言われ始めたのは、今から8年ほど前のことでしょうか?ちょうどそのころ、福井県産品にこだわった新商品の開発を考えており、厄介者のエチゼンクラゲを食材として利用できれば少しは漁業被害のお役に立てるのではと思いました。駆除するだけではなく、食べて減らそう!です。行政サイドはエチゼンクラゲという名前が風評被害をもたらすと、しきりに「大型クラゲ」という名称を使うよう呼びかけていましたが、せっかく付いている「エチゼン」を生かさない手はありません。そこで、以前から醤油や味噌の加工で相談に何度か訪れている福井県食品加工研究所にお邪魔して、エチゼンクラゲの有効利用について聞いてみることにしました。
 食品加工研究所では、エチゼンクラゲの有効利用の試験を行っており、基本的な加工法である塩クラゲへの加工に取り組んでいるとのことでした。そこで早速現場を見ようということで、福井県の沿岸にある越前町にお邪魔し、定置網船に乗せてもらいました。もちろんサンプルの入手を兼ねていたのですが、思ったよりも大きく、重量も半端ではないことが実感できました。素人が気軽に取ってきて加工するということはとても出来そうもないことが分かりましたが、とりあえずそこでサンプルを確保し、塩クラゲ作りから始めました。食品加工研究所では塩クラゲの製造技術が確立されており、施設をおかりしながら技術指導を受けました。その結果、加工に使うミョウバンや大量の塩などのコスト、加工に要する設備や、労力が課題として考えられました。
 作った塩クラゲを用いて、何か商品を開発するわけですが、福井県は梅の産地でもあり、クラゲとも相性の良い紅映梅を使った商品にすることにしました。試行錯誤を重ね、水戻しした塩クラゲを梅味噌であえた「梅味噌エチゼンクラゲ」が完成したのは2年ほどたったころでしょうか。発売するにあたっては何度も試食をしてもらいながら、調製を重ねたのですが、多くの方は好意的でしたがエチゼンクラゲというだけで気持ちが悪がる人、恐る恐る食べる人などさまざまな反応があり大変参考になりました。また「新しいふくいの味、県食品コンクール」では知事賞に次ぐ優秀賞、全国水産加工品総合品質審査会では大日本水産会会長賞を受賞し、マスコミから取材を受ける機会が増えかなり手ごたえを感じるようになりました。その後改良を重ね、地元久保田酒造の日本酒に漬け込んだ完熟紅映梅と福井県産酒米山田錦の米麹を甘酒にし、味噌とからめ自然海塩(越前塩)で味付けした、福井県産品にこだわった、身体に優しいおかずみそ「完熟梅みそ越前海月」が完成しました。11月〜4月下旬までの限定販売で日本酒のつまみに最適です。
 塩クラゲは福井県食品加工研究所の加工方法と中国式の加工方法の良い点を参考に、丁寧な仕事で安定した質の良い製品をめざし、自分流にアレンジした方法で加工しました。クラゲそれぞれに個性があり品質を揃えるのに苦労します。しかし商品を継続的に供給するには、効率的な漁獲方法の確立が望まれ、現場の漁業者サイドからの提案が必要となるでしょう。また鮮度や輸送コストなどを考えれば現場近くに加工場を確保し、地元の人達に仕事をしていただく場を提供し、共存共栄できる形が重要だと思います。そして製造コストの縮減という課題も残っています。
このようにエチゼンクラゲの加工には様々な障害が残っていますが、くら研福田氏の指導のもと、料理人の方にも評価されるような塩クラゲの作成にも取り組んでおり、一定の評価を得ることが出来るようになりました。これからはその技術を高めたうえで、利益が出るような量産体制を確立する必要があると考えています。


 一筆啓上で知られる町・丸岡。日本最古の天守閣を遠くに眺めるこの町で、蔵を開いて1世紀。煮物に刺身に焼き物にと、どんな料理にお使いいただいても素材の味が活きるお醤油として、郷土料理のお店から御家庭まで幅広くご愛顧をいただいております。
 また、私どもが代替わりしてきたのと同じように、お客様も親から子へ、子から孫へとご愛顧のバトンをわたしていただき、30年・50年と御愛用をいただくお客様が多いのが、私どもマルコー醤油の美味しさの証であると誇りに思っております。